今の世界をこんなひどい有り様にしてしまった原因は何か。その原因をつくったのは誰か。本書ではその元凶が共産主義であると見抜き、共産主義がいかに間違った、危険な思想であるかを警告している。その主張は一切の陰謀論じみた世迷言とは無縁で、だからこそ深刻な現状に対して暗澹たる気分にもなる。
共産主義に限らず、社会運動などというものは攻撃的で安らぎのない不幸の極みである。そういった運動にアイデンティティを見出してしまうと人生そのものも不幸になる。所詮は血統以外のアイデンティティなど、人工的に製造された偽善に過ぎないのである。共産主義は根底にルサンチマンの感情が充満しているのでひどく陰鬱である。温かい同族愛に満ちた民族主義とは違い、人としての本能にも背いている。破壊的な外来思想なんかに私の愛する日本は任せられない。普遍主義に基づく思想はどれもこれもろくなものがない。あなたはあなたのことだけどうぞ、日本に干渉しないでくださいと言ってお引き取り願いたいものである。
社会運動が世の中をだめにするのは、利害関係を概ね共有する同族だけの生存環境が壊されていることにより、まったく異なる民族集団がそれぞれの利益を追求し合ってしまっていることによる。民主主義という政治体制は、均一な民族集団においてしか成り立たないものであり、民主主義が成り立たなくなると帝国的な強権政治しか集団を収める術がなくなってしまう。私は民主的で平和な国にこれからも住みたいのでグローバリズムに反対する。
著者によると、アメリカにおいては大学は極左の巣窟となっているらしい。日本にもサヨカル(私の造語で「左翼思想に染まったカルト」という意味)が特に人文科学分野においてはびこっているように思う。大学に行かずとも職人的な教育をしっかりとして、大卒者と遜色ない収入を得られるようにする制度改革ができれば、左翼の力を削ぐことにつながるだろう。同じ仕事をしているのに大卒者か否かで給料が変わるなどおかしい。それこそ学歴による差別ではないか。私は同族である日本人のことを決して差別しない。学歴による収入格差はその知識や技術を活かすことによって生み出される働きによるものであって、学歴そのものによって扱いに差が表れるなど許されない。大学利権の解体は急務である。
著者はメディアは、フィクションの世界をつくり上げて演出することで人々を魅了してしまうとも指摘している。こうしたメディアの内幕が露呈したことで「オールドメディア」と呼ばれるマスコミへの不信が日本でも強まっているのだろう。
学校、メディア、市民団体が闇の勢力から公金を流されて暗躍していたことは、USAID改革を主導する現アメリカ政権によって白日の下にさらされた。USAIDと根を同じくする悪による同じような所業は、日本を含めて大半の先進諸国で繰り広げられている。悪の息がかかっていたのはアメリカだけであるなどというアクロバティックな思考をしている人は稀だろう。打倒すべき悪は私たちの日本にも巣食っている。日本人の利益にならないことを日本国内で行うすべての悪が、打倒すべき敵である。
読んでいて強く感じたのは、支配されてしまう人の心の弱さ、と言うよりも人間が構造的に陥ってしまう支配の仕組みが存在するということだった。それを避けるには強固な信仰と、それを共有する集団が必要である。共産主義というカルトから身を守るためには無害かつ有益な信仰で自分と自分の大切な人々を守る必要がある。人類社会から信仰という本能がなくなることはない。そうである以上、私たちに選択できるのは安全な信仰を奉じるか、危険な信仰に堕するかのみである。
終盤では国を悪から取り戻すために成すべき具体的な方法も記されている。私は常々、危機を周知して人々を啓蒙する者は、それと同時に対策や希望も併記しなければ無責任であると考えているので、著者のそういった姿勢にはたいへん好感が持てた。それと同時に、国を取り戻すために私たちは何をすればいいかという問いの「私たち」に自分が含まれていない人が多いことへの指摘についても同意する。世界線は絶えず無数に分岐している。あなたが日本を守ると決意し、具体的な行動に出た瞬間に、あなたの世界線は日本人が救われる世界線へと収束するのである。それは他の誰かに人任せにして得られるものではない。あなたが日本を救うのである。しかしその大業は独りで行われるべきものではない。国を救うための方法は本書にて豊富に提示されているが、そのどれもが組織的に行わないと効果が乏しいものばかりである。嘆くな、組織せよ。日本教から差し出された手は、あなたが掴んでくれることを待っている。
本書ではジョージ・S・パットンの「人にはどうすべきかを教えるのではなく、何をすべきかを教えよ。そうすれば、その人の創意工夫の才に驚かされることになるだろう」という言葉が引用されている。私は日本人が明確な拠り所として掲げることができる民族的普遍宗教の確立という方法により日本人を救おうと考えたが、他にも方法はいくつもあるだろう。本書を参考にして、あなたもこの大八洲を救う方法を実行してみてほしい。そうして歩んだ道の先のどこかで出会い、ともに協力し合うことができたならば、私にとっても幸甚の極みである。
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