1億人の賦形剤

誠に残念な話ではあるのだが、統治者が庶民に対して優しかった時代や場所は人類史のごくわずかな範囲にしか存在しなかった。人類の歴史はほぼ常に過酷であった。それでは庶民はどのようにして苦難の日々を生き抜いてきたのかというと、何らかの集団に所属して結束することで己が身を守ってきたのだ。その集団こそが中間団体であり、多くの場合は宗教がその役割を担った。

決して生きやすいとは言えない現状を生きる私たちも何らかの中間団体が必要である。現状が苦しいのならば社会に規則の変更を求めなければならない。そのためには自分と似た立ち位置の人たちと声を束ねるべきである。血盟に加われば基本属性が一致しているので個々の単発の主張だけでなく、包括的な主張を常に規模の力をもって発していける。SNSなどで単発的に意見を発したとしてもそれは自主的なガス抜きになるにすぎず、私たち庶民を見下ろす統治者たちに届くことはない。真の問題解決のためには心から要求を同じくする者たちと組織を形成しなければならない。

多くの真面目に日々を生きている人々は、私たちの社会において暴利を貪る輩に対して憤りを常々抱くことだろうが、悪しきことを他人にやめるよう強制することは難しい。悪を叩いても別の悪が力を持つだけだ。政治というのは所詮は利権や公金の奪い合いなので、文句を言うのではなく正しい集団に加わって、自分も利益を得られるようにすべきなのである。むしろそうすることでこそ悪しき者たちの一人勝ちを阻止することになる。私たちの正義を為せるのは私たちのみなのである。

あなたは独りの個人としては無力だが、集団の一員となれば強大となれる。世間は個人のことは軽んじるが、均質的な集団の一員のことは重んじるのだ。個人は集団の一員となったとき、物理学でいうところの相転移のようにまったく別の強さを有する存在へと上昇するのである。

中には自分もきちんと貢献できるか心配だ、などと思う人もいるかもしれないが気にしなくていい。非凡な全体は凡庸な部分によって構成されているものである。薬を例にすると「賦形剤」が挙げられるだろう。これは薬の有効成分だけでは微量すぎて服用しにくいので、あえて無害な物質を足すことで嵩増しして摂取しやすくするという目的で使われるものだ。同じように特別な能力はない血盟でも集団に害をなさず、その規模の拡大に資する一員となってくれるならば、それだけで十分有益なのである。国家に中間団体という薬を届けるためには、凡庸であろうと無害な賦形剤がたくさん必要なのである。

日本を守れるのは私たち日本人だけである。私たちの守る日本には、過去の先祖たちも未来の子孫たちも含まれる。がんばろう、血盟たちよ。1億人の賦形剤を組もう。

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